過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(IBS)とは

腹痛炎症などのはっきりとした病変が確認できないにもかかわらず、便秘、下痢、腹痛、膨満感といった症状が長期的にあらわれる疾患です。
便秘や下痢の症状が治まらないことがきっかけで病院を受診し、発覚するケースが多くなっています。周囲に起こる変化や心配事、緊張などから生じるストレスが原因となるため、元々の気質や精神的な弱さが悪いと症状を放置してしまう方もいらっしゃいますが、きちんと治療を行えば症状を緩和することができますので、お悩みの方はぜひ一度医療機関をご受診ください。

過敏性腸症候群のタイプ

過敏性腸症候群には以下の4つの種類が存在します。

便秘型

硬いコロコロとした便やそれらがくっついた便が出たり、そもそも排便の頻度が少なく排便後も残便感を感じたりします。また、排便に伴って腹痛が生じることもあります。これらの症状は、ストレスを原因として生じやすくなります。

下痢型

激しい腹痛とともに水のような下痢便が出ます。排便後に症状が落ち着いても、しばらくするとまた同じような症状があらわれるケースも多いです。便秘型と同様、ストレスによる影響が大きいとされています。

混合型

便秘と下痢の症状が混合してあらわれるのが特徴です。

分類不能型

便が硬かったり柔らかかったりする時もありますが、基本的に排便に異常はありません。おならや膨満感、腹鳴といったガスに関連する症状がみられます。

過敏性腸症候群になりやすい人

年齢リスク

下痢型の場合、30〜40代の壮年期の男性に多く見られます。一方、便秘型は20代と50代の女性に多くなっています。
ただ、最近では年齢や性別に関わらず発症者が増えていて、10代の発症者も珍しくありません。

体質・ストレス・生活習慣

自律神経は消化管の働きを制御する役割を持ちますが、ストレスにより乱れが生じやすい特徴があります。そのため、ストレスによる体調不良を感じやすい方は過敏性腸症候群を発症しやすいと考えられます。遺伝的な要素や、日常生活における習慣との関連も考えられているため、家族などの身近な人に過敏性腸症候群の発症者がいる場合も発症の可能性は高くなるといえます。

性格

几帳面な性格や真面目な性格が発症に影響しているとも考えられています。特に排便ペースについて、「毎日きちんと排便するべき」と固執すると逆にそれがストレスとなり、排便に乱れが生じる可能性があります。そもそも排便のペースには人それぞれ差がありますので、特別不快感などがなければ過度に心配する必要はありません。

過敏性腸症候群の検査・診断

過敏性腸症候群でみられる症状は他の消化器疾患と類似しているため、専門医による診断でそれらを区別することが重要です。中には難病やがんの可能性も考えられますので、医療機関において炎症や腫瘍などの異常の有無を確認し、正しい治療を受けるようにしましょう。
まずは大腸内視鏡検査等で炎症などの目に見える異常がないかどうか調べる必要があります。明らかな異常が見つからず過敏性腸症候群の可能性が考えられる場合、患者様の症状について詳細をお聞きし、過敏性腸症候群の診断基準である「ローマ基準」を基に診断をします。

ローマ基準(RomeⅣ)

  • 症状があらわれると排便のペースが変化する
  • 症状があらわれると便の様子が変化する
  • 排便後は腹痛などの症状が緩和する

※大腸カメラ検査、便検査、尿検査、血液検査などの結果、明らかな異常が見られない場合に過敏性腸症候群の可能性を疑います。
※腹痛または腹部の不快感が6ヶ月以上継続しており、かつ「直近3ヶ月において、1ヶ月中3日以上症状があらわれており、上記のうち2つ以上に該当する」ことが過敏性腸症候群の診断基準となります。
症状が出始めて6ヶ月経っていなくても、症状などを鑑みて過敏性腸症候群を発症していると考え、治療をスタートする場合もあります。ご自身が上記の基準に該当するか分からない、当てはまらないかもしれないという患者様も、遠慮なく当院までお越しください。

過敏性腸症候群の治療と予防

過敏性腸症候群の治療は病状の理解と薬物療法による症状の緩和が中心となりますが、併せて生活習慣の見直しを行うことも、症状抑制や再発防止のために非常に重要です。

薬物療法

薬物療法多様なお薬の選択肢があり、腸の働きを調整するお薬、便に含まれる水分を調整するお薬、消化管の蠕動運動などを調整するお薬、漢方薬などを、各患者様の症状のタイプやお身体の状態、ライフスタイルなどに応じて丁寧に処方します。新しいお薬も続々と開発されています。また、ストレスの影響が特に懸念される患者様に対しては、抗うつ薬や抗不安薬が有効なケースもあります。

生活習慣の改善

生活習慣規則正しい生活を心がけ、身体をしっかりと休ませるようにしましょう。
快適な排便ペースを取り戻すためには、便意を我慢せず、朝食後は便意の有無に関わらずトイレに行く習慣をつけましょう。
また、喫煙者の方は禁煙するのが望ましいです。

食習慣の改善

食生活改善食べ過ぎ・飲み過ぎや刺激物に注意して、3食規則正しく摂取することが身体と消化器官の安定につながります。ただし、あまりに厳しい食事コントロールはストレスとなり逆効果ですから、楽しく美味しい食事を心がけましょう。

ストレス解消

ストレス解消ストレス社会の中でスト レスを完全に無くすことは難しいですが、好きな趣味やスポーツなど、自分に合ったストレス発散法をぜひ実践しましょう。また、自身の周りの環境を整えることも気持ちをすっきりとさせるために効果的です。

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